
ロック? ポップス? ジャズ? 今まであったどの音楽ジャンルにもあてはまらない、言葉を歌うバンド「あなんじゅぱす」。
闇の中で、明滅を繰り返す、ひらたよーこの歌声。そのヴォーカルの麻薬性をたきつけるかのように、うねる演奏。
最期の晩餐という言葉があるけれど、もし最期の楽曲というものがあったとしたら「あなんじゅぱす」の音楽がふさわしい。
それが大げさか、どうかは、実際に聞いてもらうしかないけれど。
HOME > インタビューバックナンバー > vol.001 > interview 04 あなんじゅぱす「現代詩でライブする」

ロック? ポップス? ジャズ? 今まであったどの音楽ジャンルにもあてはまらない、言葉を歌うバンド「あなんじゅぱす」。
闇の中で、明滅を繰り返す、ひらたよーこの歌声。そのヴォーカルの麻薬性をたきつけるかのように、うねる演奏。
最期の晩餐という言葉があるけれど、もし最期の楽曲というものがあったとしたら「あなんじゅぱす」の音楽がふさわしい。
それが大げさか、どうかは、実際に聞いてもらうしかないけれど。
・・・Chapter1 あなんじゅぱすと現代詩・・・
一あなんじゅぱすは、谷川俊太郎、寺山修司、萩原朔太郎、田村隆一をはじめとする多くの詩人の作品に、メロディをつけて歌っていますね。もともと、歌のために書かれた詩ではないせいでしょうか。僕らが歌と思い込んでいる歌とは、全く違う構成ですし、ひらたさんの歌い方一つとっても、独特のフォームがありますね。多くの歌とは、存在する世界が違うと言ってもいいくらい、違います。
ひらた 「きっと…怖れ知らずなんでしょうね(笑)。歌をちゃんと勉強している方からすると、これは絶対に違うだろ、とか、こういう風にすると下手に聞こえちゃう、というようなことをたくさんしてる気がします。テクニックという部分で見たら『えっ?』って感じでしょうね」
一でも、それはあえてテクニックに固執しないという気持ちからでしょう?
ひらた 「んー、というよりも…詩を歌っている時って、あんまり考えていないんです。自分がいなくなっちゃうような瞬間があって、そういう時に、歌になる感覚ですね。詩にメロディをつける時も、つけよう、つけようとは思っていないんです。詩を読んでいる時、瞬間的にメロディが浮かんできて、急いで録音することが多いので。優れた詩は世界の本質を、良い距離感で表現してくれます。それを読んだ時、私の頭の中で、爆発した感覚みたいなものをそのまま音にしているんですね」

[ハモニカ奏者・清野美土さんが参加 2008年7月開催あなんじゅぱすパリライブの模様]
写真提供:ドラゴン・ヤー、冨岡祐子
一あなんじゅぱすが歌っている詩はひらたさんが選ばれているんですよね。
歌になる詩、歌にならない詩、この別れ目はどこにあるのですか。
ひらた 「歌わないけど、大好きな詩はたくさんあります。詩集を読んでいて、メロディがパッと浮かび上がってくる詩もあるし。言葉だけで満足っていうのもあるし。あと、3年前は、メロディをつけなかったけど、
今はこの詩を歌いたいっていうこともありますね」
一谷川俊太郎さんの詩を数多く歌にされてますが、正直、よく谷川さんが承諾されたな、と(笑)。
ひらた 「あなんじゅぱすとして活動しはじめる前のことです。詩に曲をつけてレパートリーが少しずつ増えてきた頃、高校生と芝居を作ろう、みたいな演劇の企画があったんですね。
その打ち上げで、高校生たちの前で谷川俊太郎さんの詩にメロディをつけた曲を演奏をしたら、ある女の子から『谷川さんに教えてあげればいいのにー。喜んでくれるよー』って言われたんです。さすがに高校生の女の子よりも現実が分かっているので、谷川さんは喜ばないだろう、とは思ったんですけど(笑)。でも、ご本人にお伝えすれば『もしかして許してはくれるかもしれない、そうすれば、公にいろんな人の前で演奏できるかもしれない』と、谷川さんにお手紙を書きました。そしたら、谷川さんから快諾のお返事をいただきました。ライブにも、2回見に来てくださって…」
一え! 谷川さん、ライブにいらっしゃったんですか。緊張したでしょうね…。
ひらた 「ライブを見ている時の視線には厳しいものがあって、やはり、一流の芸術家だなと感じました。谷川さんの講演を聴きに行った時も、質問コーナーでお子さんからの質問にも大人相手のように真剣にお話されて、たやすい人ではないな、とは感じました」
あなんじゅぱすメンバー
音楽監督・キーボード・ベース/ 只野展也からのメッセージ
はやいもので、あなんじゅぱすに参加して6年、実はそれ以前の曲ってほとんど知らなかったんです。客としてはじめて観たときは、なんとも形容しがたい、不思議というか妖怪的というか、普通じゃない印象に満ちていました。
ユニットの変化とともに曲調にも幅が出て深みが増してきましたね。今回はそれぞれ違ったメンバーと連続3バリエーションライブ?、楽しみですね。あ、今CD制作中です、ライブ当日は会場販売もされることでしょう。皆様よろしく〜。
・・・Chapter2 あなんじゅぱすのリズム・・・
一今日は、ひらたさん以外のあなんじゅぱすのメンバーにも来ていただく予定ですが、もうそろそろいらっしゃいますかね?
よーこ 「もう、近くまで来ているはずなんですが…これから来るのは、ドラムとプログラミングを担当している大光さんです。大光さんは、フリードラマーとしてSMAP・渡辺美里・TMレボリューションなど、たくさんの有名ミュージシャンの音楽づくりに関わってきた方です。アメリカでアルバムをリリースをしてCMJチャートで最高3位を獲得されたこともあってですね、あなんじゅぱすを助け…あ、来ました、来ました」
大光 「はじめましてー大光です。今、何飲んでるの?」
ひらた「カフェオレ。はい、メニューはこれだよ」
大光 「(熟考…)んー、僕も、カフェオレにしようかな…」
一あなんじゅぱすで、ドラムを叩いている時はどのような感覚?
大光 「あなんじゅぱすは、詩ありきの音楽なので、特殊ですね。言葉で表現するのは、なかなか難しいんですけど、ポップスとジャズの両方を意識しているような、たんたんとしながらも、表現力豊かにというような感覚でしょうか」
一あなんじゅぱすは、詩にメロディをつけているので、構成が変則的ですね。Aメロ・Bメロ・サビみたいなパターンがないので、ドラムを叩きにくくないですか。
大光 「そういうことはないですけど、(ひらた)よーこさんに持っていかれる時はありますね。ライブもそうですけど、レコーディングの時なんかでも、完全に自分の世界に入ちゃうタイプの人で、周りが見えなくなっているんだろうな、と思いつつ叩くこともあったり(笑)。最近、見ることがないというか、会おうと思ってもなかなか会えないタイプの人なので一緒に活動してて楽しいですね」
ひらた 「そういえば、去年の7月くらいから、大光さんをリーダーにして『あなんじゅぱすnano』というユニットでも活動してるんですよ」
一nanoがついたあなんじゅぱすは、はどのように変わるのですか。
大光 「通常の『あなんじゅぱす』よりも、ちょっとポップス風にアレンジしています。オリジナルの『あなんじゅぱす』よりも敷居を下げるというか。もうちょっと普通のポップスの様式を取り入れて、分かりやすい感じにしたいと考えています」
一ひらたさんが劇団の女優をされていたり、大光さんがフリーのドラマーをしていたり、各々のメンバーがもう一つの活動を持っているので、ライブをする時など、みんなで時間調整をするのが大変じゃないですか。
ひらた 「今日は来てないですけど、残り2人のメンバーも、只野さんは様々なアーティストセッションしていますし、サイトウさんはギターの先生をしています。でも、現代詩ってそんなにみんなにもてはやされてないから(笑)。今のところやりたい時に、やりたいようにやっています。普通に商業ベースでやっていたら出来ないことでしょうね」
一逆に、各々、柱になってる活動があって、機会があるごとに集まるので新鮮さはあるんでしょうね。そんな活動をずっとされてきて、一番想い出に残っているライブは?
ひらた 「日本国内だけでなく、ローマ、フランスなどでもライブを重ねてきましたが、そうですね…北海道・室蘭のホスピスで行ったライブでしょうか。末期癌の患者さんたちが、点滴を受けながら聴いてくれて。皆さん、体力が落ちていて、集中力も短いはずなのに、すごく喜んでくれました。そのライブの時に演奏した中に、田村隆一さんの詩を歌った『夜の江ノ電」という曲があったのですが、若い頃、鎌倉に遊びに行った思い出がある方が多く、その時のことを思い出したよ、と喜んでくれました」
一「夜の江ノ電」は、僕も大好きです。聴いていると、情景が浮かんでくる。本当に、江ノ電に乗っているような、夜の海に白い波頭がキラキラ光って見えるような気がしてきます。
ひらた 「そう言っていただけるのが、一番嬉しいですね」
あなんじゅぱすメンバー
ギター担当/サイトウミノルからのメッセージ
僕は仙台に籠っていることが多く、外部との交通はほとんど只やんに頼っています。あなんじゅぱすとの出会いも只やんのおかげです。
アートにはそれぞれ特有の不文律というか文脈があると思いますが、よーこさんには音楽的に手垢のついた文脈がほとんどなくてそこがものすごく新鮮でした。
・・・Chapter3 現代詩とメロディ・・・
一そもそも、ひらたさんは、なぜ現代詩にメロディをつけようと思ったのですか。
ひらた 「自分でオリジナルのメロディだけを作って、それを時折、ピアノで弾いていただけで満たされていた時期もありました。でも、メロディだけだと、自分一人だけの世界で他の人と何かをすることはできないなぁと思ってて…ある日、谷川俊太郎さんの詩を読んでいたら、『あ!ここに歌詞があった!』と気づいて、その詩とメロディを合わせてみたら、ぴたっとはまって歌になったんです。ダンスで言うと、ダンスホールの壁際に一人で佇んでいて、やっと一緒に踊れるパートナーに巡り合えたみたいな瞬間ですよね」
一自分でメロディを作っていて、作詞をしようとは思わなかったんですか。
ひらた 「私はこのメロディに詩を書かなきゃ、と思ってもなかなか書けないタイプなので…。ただ、あなんじゅぱすでも、20曲に1曲くらい、私が作詞をした歌もありますね」
一ひらたさんが歌うと、詩が映像になったり、詩が心にすーっと入ったり、言葉が浮き立ってくる。こういう情感豊かな歌い方は、劇団青年団の女優をされていることも、かなり関係している気がしますが。
ひらた 「言葉がどれほどの力を持ってるか、ということを自覚しただけでも、お芝居やっていて良かったって思いますね。例えて言うと、劇団の活動はオーケストラの一員で、あなんじゅぱすはアンサンブルみたいな…その間を行ったり来たりして、言葉の世界を留学している気がします」
一そういう感覚だと、劇団とあなんじゅぱすの活動、それぞれが自然に相乗効果を生みますね。
ひらた 「そうだと良いですね。以前は、私なんかが勝手に詩にメロディをつけて良いんだろうか、とひっかかっていた時期もあったんですけど、詩人・田村隆一さんが亡くなった時に新聞に出た『現代詩は、一人の人のためではなく、万人のものだ』という意味の言葉を読んでその想いがふっきれました。詩が万人の喜びだとしたら、私がそれにメロディをつけたことで、聴いた人と詩の出会いになればいい。今はそう思えます」
一あなんじゅぱすの活動を通して、私たちとたくさんの素晴らしい詩の出会いの場を作っていただければと思います。本日は、ありがとうございました。
後藤雅洋 ジャズ喫茶「いーぐる」店主・ジャズ評論家
ランボー、朔太郎、そして田村隆一。
稀代のことばの魔術師たちに拮抗する、声の力の素晴らしさ。
ひらたよーこの歌声は、やさしく力強く、しみじみ と闊達に、 ぼくらの身体に染み渡り、心ときめかす。

《演奏曲》
1. 旅上 萩原朔太郎 2. きみに 谷川俊太郎 3. 潜光(インスト 曲:只野展也)
4. 迷子 谷川俊太郎 5. 感触(Sensation) Arthur Rimbaud 堀口大學訳
6. レクイエム 谷川俊太郎(「死と炎」より) 7. ロング・グッドバイ 寺山修司
8. 夜の江ノ電 田村隆一 9. 満月 田村隆一 10. あなた 谷川俊太郎
11. 東府中の踏切で 松山龍彦 12. キラキラヒカル 入沢康夫
13. 新しい荒野ーアポロ11- 谷川俊太郎
正岡子規の短歌から谷川俊太郎の現代詩まで「ことばをうたうバンド」。1996年の結成以来、ネイティブ・ミュージックの新次元にむけて活動を展開。ライブハウスにとどまらず、ホスピス・保育園・知的障害をもったこどもたち向けコンサートなど幅広い活動を展開。2008年7月には、仏パリ・セーヌ川上のライブハウスでのライブを行った。
ご予約・お問い合わせ:
anapa_yoyaku@freeml.com
アコースティック version
8月17日(日)
【吉祥寺】MANDA-LA2
17:30 開場 18:00 開演
チケット
予約¥2,800 当日¥3,000
ポップ version
8月21日(木)
【阿佐ヶ谷】Next Sunday
19:00 開場 19:30 開演
チケット
予約¥1,800 当日¥2,000
アンサンブル version
9月20日(土)
【吉祥寺】MANDA-LA2
19:00 開場 19:30 開演
チケット
予約¥2,800 当日¥3,000