Profile

株式会社ノビテク 大林伸安

大林伸安(おおばやし・のぶやす)
株式会社ノビテク
代表取締役 やれる気請負人
一昨年、日本一の規模の研修実施プロジェクトを講師側総責任者としてマネジメントし、完遂させる。研修講師としても大手企業を中心に100社以上、経営幹部から新入社員まで、何万人もの受講実績がある。“やれる気請負人”として教育やコミュニケーションの促進により組織や人材のやれる気を引き出す。

Information

・07.06.25
神田へ移転しました。
〒101-0044 東京都千代田区鍛冶町1-3-1 マレ神田ビル9階
Tel:03−5209−1107
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連載 第五回 一枚の葉書

 20代の頃、私は「伝説の営業マン」を夢見ていた。そうなるためにはどうすればよいのかいつも考えていた。とにかく人並みはずれた成果を上げなければ伝説にはなれない。問題はどうすれば人並みはずれた成果を上げることができるかである。しかし、その答えはなかなか見つからない。
 考えついたのは、書店へ行きトップセールスが書いたノウハウ本を探して読むことだった。しかし、そこに書かれている内容に私の求めていた答えはなく、はっきり言って当たり前のことしか書かれていなかった。何か隠されたノウハウが必ずあるはずだと信じて一生懸命探したが、結局それが何なのか、その時の私にはどうしても分からなかった。それでも諦めきれず、何としても知りたかった。
 そして考えた末に取った行動は、直接トップセールスに話を聴くことだった。ちょうどそのころ、ある自動車メーカーの営業教育の教材制作に携わっていた私はその機会を利用して、全国に散らばる選りすぐりの優秀営業マンに直接話を聴いてまわることができた。
 何万人もいる営業マンの中でもトップクラスの優秀な面々である。私はいよいよその「何か」が明らかになることに胸躍らせた。
 ところが、いざインタビューをしてみると、「時間をきちんと守る」「お客様は勿論、社内のどの部署の人にも元気よく挨拶をする」「第一印象が大切である」「お客様の話をよく聴く」「クレームの時こそ、より誠心誠意な対応をする」「お礼状をきちんとすぐに出す」など、当然のことばかりがでてくる。これで本当に伝説になれるのかと、少々拍子抜けしてしまった。
 そんなある日、その日も都内でインタビューを行った。しかしその営業マンが話してくれた内容も、やはり他の人と同じように至極当たり前の基本的なことであった。夕方から始めたインタビューが終わった頃にはすっかり時間も遅くなっていた。もう一件お客様との約束があるというその営業マンにお礼を言って別れ、私は会社へは戻らず自宅へ帰った。翌日は1日外出し、翌々日、会社でその営業マンにお礼状を書こうかと考えていたまさにその時、私のもとに彼から御礼の葉書が届いたのである。つまりそれは、彼が私のインタビューを受けてくれたその夜、全ての仕事を終えた後に筆を取りその日のうちに投函したものだ。一方インタビューをお願いしたほうの私はというと、2日後の今になってもまだ考えあぐねていた。葉書を持つ手が震えた。
 「お礼状はきちんとすぐに出しましょう」私たちは営業の基本として当たり前のように言っている。でも、それを継続して必ず実践しているだろうか。この一枚の葉書に、私は伝説になる人となれない人の差を感じて鳥肌がたった。若かった頃、伝説になるような人は必ずスペシャルな何かを持っているのだと信じていた。自分にはスペシャルなものがないといつも嘆いていた。でも本当は、何かしらのスペシャルなノウハウがあるのではなく、「当たり前のことを当たり前に行う」それを「継続して行う」、それが答えなのである。口で言うほど簡単ではない。ただ、そのことに気付くか気付かないかは大きな分かれ目なのだ。

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