No.18 須藤元気

須藤元気には、幾つもの思想がある。その一つひとつの思想の奔流を丁寧に辿っていくと全て彼が格闘家の時から発信していたメッセージ「WE ARE ALLONE」に行き着く。彼の中に、「WE ARE ALLONE」という極太の大黒柱が確かに存在していることを感じたインタビューだった。
PROFILE
須藤元気(すどう・げんき)
1978年、東京都生まれ。格闘家として活躍、現役中に役者・モデル・書道展入選や著書「風の谷のあの人と結婚する方法」がベストセラーになるなどマルチな才能を発揮。その活動を通じて「WEARE ALLONE(全ては一体である)」というメッセージを発信。2006年12月31日、突如リング上で引退を表明。引き際の潔さが話題に。
思考というのは計算機ぐらいのものでしかないと思っている
——トイレの便器の前に貼ってあった「一歩、前に」という言葉を見て、須藤さんが格闘家引退を決意されたというのは有名な話です。この部分をもっと突っ込んでお聞きしたいのですが、引退というような人生を左右するようなことを考えている時、須藤さんの思考回路はどのように働くのでしょうか。
須藤「思考はしてなかったですね。思考というのは、計算機ぐらいのものでしかないと思っているので。ようは、思考することで出来るのは、メリットとデメリットの足し算や引き算、できてもかけ算やわり算くらいなんですね。どうしても損得で考えてしまう。そうすると不純なものも入ってきますし、本当に自分の求めている答えが出てこないんですよ」
——須藤さんの新著「神はテーブルクロス(幻冬舎 刊)」の中にも、思考を止めることに関する記述がたくさん出てきますが、ご自身ではどのように実践されてますか。
須藤「もちろん、考える時は考えるんです。頭を使う時は使って、自分自身に質問を投げかけた後に、思考を一回止める癖をつける。逆に止めないと答えは出てこないんですよ。いつまでもずっと考えていると、思考にも中だるみが出てきて、よく分からなくなったり、ふんぎりがつかなくなったりする。いざ、実行に移そうと決めても思考を止めないと、『でもやっぱり時間もお金もないしなぁ』『でもやりたいなぁ。どうしよう』と堂々巡りをしたりする。実際、夢を実現するまでに、何が一番時間をとっているかというと、考えている時間なんですよ。だから僕は、考える前に行動した方が早いと思う。もちろん、行動する前に、ある程度の組み立てはしますけど」
——そういう思考を止めるって発想はどこから生まれてきたのですか。
須藤「いやー、僕はもともと、人一倍考える方だったし、悩んでしまう方だったと思います。そういった傾向が強かった分、模索したというか。格闘家としてやっている中で、考えることの無意味さっていうのに気付いてしまったんです。勝とう、勝とうと変に気負ってしまったり、負けたらどうしようと悩んでたりしてましたね」
思考することと試合の結果はつながっていなかった
——それがなぜ、劇的に変わってしまったんですか。
須藤「万が一、相手がこういう技を出してきたら、こっちもこうやって応戦しようってかなりシミュレーションもしてたんですけど、現実は絶対にそうならないんですよ。つまり、思考することと試合の結果はつながってはいない。そこで無意味だと気付きましたね。だから、アウトラインだけ決めて後は考えないのが一番です」
——んー、すごくよく分かりますし、実行したいって思います。その分、しつこくなってすみませんけど、実際に思考を止めるのって難しいですよね。どうしたら止められるのでしょう。
須藤「一番は、目をつむって瞑想することなんですけど…いろんな所で僕がそう話しても、あまり皆さんやらないし、やってもなかなか続かない(笑)。もっと簡単な思考を止める方法では、歩くことっていうのは有効ですね。人間歩いている時って、ネガティブな思考になりにくい。僕自身、実行しててそう思います。それ以上に簡単な方法もあるんですけど…」
——思考を止める技で、歩くよりも簡単な方法があるもんですか!
須藤「好きなことをやる時間を作るんです。歌を好きな人が、カラオケで歌っている時って瞑想状態なんですよ。本当に自分が好きなことをしていて、完全に入っちゃってる状態ってあるじゃないですか。うわーって(笑)。そういう時って、何も考えてない。思考停止状態」
——それでいうと、自分が心から楽しめれば何でもいいわけですね。
須藤「ペットと遊んでもいいし、波乗りしてもいいし。実際、僕はサーフィンが好きなんですけど、海にいる時は良い波を待っているだけで何も考えてないですよ」
——と、ここまで読んだ読者の方は、なんて簡単なんだ! と思ったかもしれませんが、うわーっと入ってしまうほど、好きなことってなかなかないですよね。これについても、突き詰めて考える必要はありそうです。
須藤「例えば、単に親を喜ばせるためにやってることを好きなことって勘違いしてるケースも考えられるわけですよ。今、好きだと思っていることを、他人の価値観ではなく、自分の価値観で喜んでいるのかっていうのを再確認する必要はありますね」

















