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No.25 矢野沙織 ジャズミュージシャン

矢野沙織 主演、矢野沙織

矢野沙織は1940年代の年期の入ったサックスを愛用している。その約60年前のヴィンテージ・サックスを前に「消耗品」と言い切ってしまう。これまでのアーティストだったら、楽器へのこだわりを述べただろう。そこに、彼女の感性の新しさを何より感じた。矢野沙織にとって楽器はあくまでも道具でしかない。主役はどこまでも自分。そこに他のものが入る余地はない。

PROFILE

矢野沙織(やの・さおり)
1986年生まれ。東京出身。9歳のときブラスバンドでアルト・サックスを始める。チャーリー・パーカーに衝撃を受けジャズに傾倒。14歳でビリー・ホリデイの自叙伝に感銘し、自らジャズクラブに出演交渉を行ってライブ活動をスタート。ジャズの名門SAVOYレーベル日本人アーティスト第2弾として2003年9月、16歳でセンセーショナルなデビューを飾る。日本にとどまらずニューヨークでもライブを重ね、着実に評価を高めている。一方、テレビ朝日系「報道ステーション」テーマ曲に起用され、世に新世代ジャズの到来を知らしめた。2007年春、花王“ASIENCE”の新たなアジアンビューティとしてCMに登場。同CMで使用されているオリジナル曲「I & I」を加えたベストアルバムを6月20日にリリース。ジャズの枠を超えて広く注目を集める存在となっている。
http://www.yanosaori.com/

人からお金がもらえればもう絶対プロですから。これだなと思って

矢野沙織——じゃんけんで負けてアルトサックスをはじめたということですが
矢野「なんかうそっぽいんですけど、ホントのことですよ。マーチングのパート決めで、負けました。…でもなんでかな、わりと最初から思ってましたね、プロになるんだろうなっていうのは。なんの根拠もなく」
——ジャズをやりはじめたきっかけは
矢野「父親がジャズこそやらないですけど、音楽をよく聴く人で、たまたま家にあったジャコ・パストリアスという人のCDを聞いたんです。めちゃくちゃうまくて、かっこいいんですよ。少し前のジャズマンでベーシストなんですけど、音色的に信じられないようなベースだったんです。で、そのCDの一曲目に『ドナ・リー』って曲が入っていて、誰の曲なんだろうって調べたらチャーリー・パーカーって人で、アルトサックスプレイヤーだったんです。それで今度はその人聴いてみようかなって」
——そして中学生の時に、自分で電話してライブハウスに出演交渉を
矢野「そうなんですよ。もっと簡単に話はつくもんだと思っていて…もうプロになるって決めてましたから。高校なんかいかないで、アメリカに行こうと考えてました。だけど、言葉もしゃべれないですし、お金もない。プロになりたいけど、プロになる資格とか免許とか一切ないじゃないですか。どうやったらプロになれるんだろうって考えた時に、ビリー・ホリデイって人の伝記を読んだんですよ。ちょうどその時の私と同じ14才で、ご飯が食べられなくて、キャバレーで歌って、一晩で大スターになったって書かれていたんです。人からお金がもらえればもう絶対プロですから。これだなと思って。で、その本によれば、クラブというのは、毎晩ただ楽器を持って行くと演奏ができて、それでステージにお金が投げ込まれて、っていう世界なんですよ。だから、日本のジャズクラブもきっとそういうもんなんだろうなって、簡単に考えてました。でも一応連絡しとこうと思い電話したら、意外と断られたんでびっくりしましたね(笑)」
——そんな中、たった一軒だけ話を聞いてくれたんですか?
矢野「そこのマスターが自分の息子さんと私が同い年だったんで、おもしろがってくれたんです。少しの間、うちに来るバンドに飛び入りしてみないかといわれて。それが一年くらい続きましたね。で、今のコロムビアのディレクターさんと知り合うきっかけになりました」
——自分の中で思っていた理想と、現実のズレはありませんでしたか
矢野「ありましたね。やっぱり。はじめは中学生がでて、生意気にやってればみんなかわいいって喜んでくれたんですけど、いざCDデビューするかもしれないことになって、自分名義のライブをやったんですね、そしたら人がいないんです、とにかくお客さんが。その時にやっぱりいろいろ、これじゃ食えないぞって考えましたね」
——そこで突き進んでこれた。それが矢野沙織の強さと感じるのですが
矢野「いや、多分、私ね、すごく運がいいんですよ。人より何倍も。タイミングがいいんです。これをやり始めたのが、東京で大学を卒業して一人暮らしをして、っていう状態では不可能ですから。でも当時は高校生で、親のすねを堂々とかじれる年齢でしたからね。よく若い時にデビューするのが是か非かというのがありますけど、私は絶対よかったと思ってます。それがやれた環境があったというだけで、自分が特に優れているとは思わないので。『私は運がいいんです。』っていうだけです」

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